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VOL.4: Azzurro Interview (Interview and Text by Kou Furukawa)

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このHPに掲載されているAZZURROのファーストアルバム「Il Mare Azzurro」のインタビューを行なったのが2003年の3月15日。それから6年後……新作「The B-Side」のために久しぶりにAZZURROから話を聞いたのが、奇しくも前回インタビューした日付からたった1日遅れの3月16日。丸6年振りか! しかしどうだろう、お互い歳もとって仕事も環境も大いに変わったというのに、6年のブランクを微塵も感じさせないこの余裕。6年があっと言う間に感じられるのは、それだけお互い充実していた証拠なのか、それとも単に老けただけなのか。中年か。中年なのか? 仮に中年になったとして、それじゃあ中年なりの頑張り方ってどうなのか? そんなようなインタビューになっております(特に後半が)。
(聞き手・文責/古川 耕)


――まず大枠のところから聞きたいんですが、いつ頃からこのアルバムをつくり始めました?

attribution e.p.AZZURRO 去年の3月にインナー・サイエンスとスプリットでアナログ・シングルを切ったんですよ(「attribution e.p.」)。セカンド(「10000 Light-Years From Home」)が2007年の3月に出て、そこからすぐ動き出していて。で、去年の10月に出したリミックス盤(「attributions remix e.p.」)の制作もやりつつ、アルバムのことも考えながら。ともかくビートは切れ目なくずっとつくっていて。で、インナー・サイエンスとのプロジェクトは、四つ打ちもあったり、音的にはエレクトロニックでちょっと硬い方向、シンセをどう弾くか、がテーマだったので、その反動じゃないけど、ある種ファーストに近いというか、サンプリングを前面に押し出したようなトラックがパラパラと出来てきて。それを去年の秋ぐらいからまとめ始めました。

――じゃあ素材的なものは2007年からつくり始めていたと。

10000 Light-Years From HomeAZZURRO
 そうですね。それと、セカンドでひとまず全部吐き出したあと、ワークフローを変えたんですよ。それまでは1曲ごとにサンプリングした素材を、例えばビートをバラしたり組み替えたりしてどう発展させるか?というつくり方をしていたんだけど、サンレコ(『Sound & Recording Magazine』)も忙しかったりして、まとまった時間を制作に割けなくなってきた。なので、ちょっと時間があるときにサンプルをまとめて録ってバラしたり、曲の“基”になる素材を、時間を見つけてはフォルダに溜めるような作業を始めたんです。つまり、分散化ですね。曲づくりのステップを分散化させるようなことを、インナー・サイエンスとの作品を進めながらやって。そうしたら、曲が沢山つくれるようになった。それまでも、常に作業中の曲が20曲ぐらいある状態だったんですけど、それがもっと増えた。50曲ぐらいは何かしら手を付けているトラックがあるんですが、それを去年の9月ぐらいからまとめ始めて、フリーズとかマイク・ジャック(プロダクション)に話を振り始めたり。そんな感じでした。

――料理で例えるなら、下ごしらえをした食材が冷蔵庫に並んでいる状態だったと。

AZZURRO そうそう。

――で、昨年の9月ごろから一気に調理を始めて。


AZZURRO そうですね。あとは、ビッグ・ジョーのアルバム(「Come Clean」。2008年10月リリース)かな。

――というと?

disco dal vivoAZZURRO セカンドをつくっているときって、実はあんまり「ヒップホップであること」みたいなことを意識していなかったんですよ。当時コーネリアスの「SENSUOUS」ってアルバムが出て、あれは音そのものの存在感と配置とタイミングだけで曲が成り立っているような構造をしたアルバムで、ああいう音楽の有り様、存在感みたいなものに影響されて、それと同じような立ち姿の音楽をサンプリングでやってみようと思ったんです。で、それはそれで自分なりにやれたと思うけど、音が良すぎて最近の自分のライブやDJの中だと逆に馴染まなかった。「disco dal vivo」(Mix CD。2009年3月リリース)を聴いてもらえれば分かると思うんですけど。

――はい。

AZZURRO ああいう感じで、自分のビートと他の曲を等価でABLETON Live上に並べてダブ・ミックスするのが最近のスタイルで。そうすると「10000 Light-Years Form Home」は音が良すぎて他の曲と混ざらないし、クラブの増幅されたPAで聴くとハイハットとかバチバチしすぎて全然フィットしなかったんです。そういうことに対する反動もあって、「ピュア・オーディオ的には音が悪いけど、ヒップホップ的に言うといい音」みたいな、そういう音像をあらためて詰めてみたいと思った。で、そういう気持ちのところに「Come Clean」を聴いて、なんか「いいじゃん、ヒップホップ」と思えて。あのアルバムって、ビートとライムが凄く拮抗してるというか、ラップとビートがガシーン!とぶつかって、軋んでるんだけど、その軋みがグルーヴになっている。「俺が好きなヒップホップってこんな感じだったな」という気持ちになったんです。
 それと、2007年の夏に札幌にDJで呼んでもらったときに、なんて言うのかな……これは個人的な課題でもあるんですけど、俺、「disco dal vivo」みたいなライブって、ヒップホップの元ネタとかの知識がある人じゃないと楽しめないと思っていたんですよ。でも、札幌の観客は凄く反応が良かったんですね。俺が好きなヒップホップの質感みたいなものがよく教育されてるというか。それは例えば福岡の親不孝通りで感じるのと同じヴァイブスなんですけど。「Come Clean」とそうした札幌での経験が引き金になって、今度のアルバムではラップの曲もやろうと決めたところはある……俺の中の<B>な感じを打ち出す内容にすれば、筋が通るんじゃないかって、そこからアルバムの全体像が見えてきました。

――セカンドのとき、まりん(砂原良徳)の「LOVEBEAT」とコモンの「Like Water For Chocolate」の音質を目指したって仰ってましたよね?

AZZURRO はい。

――実際、前のアルバムはかなりハイファイ寄りでしたけど、それに比べると今回、音質がラフになったのはそういうことだったんですね。

AZZURRO そうですけど、音質だけではないと思うんですよ。「10000〜」のころは、やっぱりマインドが現場から離れていたというか。だから、レギュラーDJ(armonia@中目黒OVO)を再び始めたのも大きいかもしれない。それは2008年の3月からで、そこではアナログだけで(DJプレイを)やっているんです。サンレコ入ってからは全然DJやっていなかったんですけど、そこでまた改めて「レコードっていいな」と思えたり、クラブの音響感を思い出したり。そういう現場感が戻ってきて、それがアルバムに反映されてるのかもしれない。

――今回、ファーストとセカンドとの比較で言うと、ファーストの成分が6割ぐらい入っているイメージなんですよね。それは楽曲のバラエティとか、音楽的な内容でも。

AZZURRO そうですか。

――ファーストのときのインタビューで、「自分を取り巻く関係性も含めてヒップホップ」「自分ひとりで完結させてアルバムをつくることは今のところ興味ない」って言ってましたけど、今回はまたそこに戻ってきたという感じなんですかね。

AZZURRO そうですね。まあ、前作は古川さんがレビュー(『Music Magazine』)に書いてくれてたように、自分にとってのチャレンジで。いま聴くとなんであんなストイックなんだろうと思うけど、当時はそういう感じだったんですよ。俺、思ったのは、やっぱり自分は“編集者”なんです。作家ではない、資質がもう思いっきり。セカンドにしたって、自分のことをひとりで綴って出すつもりでやっていたんだけど、結局最後にタナブ君(Shigeru Tanabu)のギターを入れちゃったり。それは「そうしたほうが曲が良くなるだろう」という、編集者の視点なんですよね。今回はだからもう、途中からは完全にそういうモードで。「これはラップが乗るべきだ、これはスクラッチが乗っていたほうがいい」とか、エディターの目線でやっていましたね。

――けどバランスとして、例えば全曲ラップが入ってるとか、全曲ゲストが入ってるとか、そのどっちかには振れないわけですよね。

AZZURRO はい。

――アルバムの全体像ってどういう風にイメージしてました?

AZZURRO やっぱりファーストの感じに近いのかな? ファーストのあのバランスが俺の中で一番気持ちいいというか、アルバムのありかたとしてひとつ理想なのかもしれないです。クラッシュさんのサード(「MEISO」)とか、ああいうのが理想像としてある。とにかく全編インストとか全編ラップっていうのは……ひとつのチャレンジとしてやるのはいいのかもしれないけど、なにも考えないで気持ちいいところに従ってやってくと、ファーストとか今度のアルバムみたいなバランスになる。

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