azzurro official website
HOME BIOGRAPHY DISCOGRAPHY AUDIO & VIDEO INTERVIEW PHOTOS LINKS CONTACT TO AZZURRO
 
VOL.4: Azzurro Interview (Interview and Text by Kou Furukawa)

←PREV 1 2 3 4 5 6 NEXT→

――ラップ曲はどういう録り方だったんですか?

AZZURRO それぞれで。フリーズの曲(“I'm Not Playing 2009”)とマイク・ジャックの曲(“Livin Proof Pt.2”)に関しては、録り慣れてる環境があるということだったので、そこで録ってオーディオ・ファイル送ってもらって。で、ミリの曲(“Kaikou”)は東京に来たときに会って、カズオさん(G.M-Kaz)のスタジオに行って声だけ録らせてもらいました。

――トラックは完成したものを渡した? それとも先方に選ばせた?

AZZURRO 完パケしたものを渡しました。今回参加している3組って、トラックをバラッと並べてみて、これはフリーズしかない、これはミリしかいないっていう決め撃ちなんです。逆に言うと、それが浮かんだ人にしか渡してない。リリックについては、サンプリング・サイエンスというか、DJ/ビートメイキング/ネタ掘りとかについて書いてほしいというのを三者共通で出したんですけど。守ってくれたのはマイク・ジャックだけですね。

――ミリさんとの「Kaikou」はラフな感じですね。

AZZURRO あれは、ワンテイクです。一発録り。スタジオに入って、あんまり決め込んでいない感じだったんで、だったらフリースタイルっぽく録ればいいという現場の判断です。でも、そこで「限りなく黒に近いブルー」って凄いパンチラインが出てきた。

――一番難しいビートですよね。


AZZURRO 難易度高いだろうなとは思ってたんで、だからこそミリに当ててみたかったんですよね。

――結果的に三者三様の歌詞になったわけですけど、そこでアルバムのトータルのイメージとズレちゃうかも、みたいな心配はなかったですか?

AZZURRO まず最初にマイク・ジャックが「こんな感じです」ってデモを送ってくれたんですよ。

――真面目だなあ。

AZZURRO 有り難いですよね。もうそれが120点のバッチリな歌詞だったんで、他の人が多少ブレてもこれだったらOKだろう、というのはあった。で、次がミリだったのかな。一番最後がフリーズですね。フリーズとはビートを送る前に電話で話していて、「オリーヴ・オイルとやるときは曲タイトルを決めてそこから発想するから、まず最初にタイトルをくれ」と言われたんですよ。だから“Beat Madness”とか、そんな感じがいいかなとか伝えて。で、それも……。

――それすら守られず。なんなんだ。


AZZURRO ビートのビの字も無かった。でも、不思議なんだけど、結果的に俺が言いたいことを言ってくれた感じもある。メッセージに何一つ嫌なところがないし、歌詞込みでワーッと来る感じがあった。だから、敢えてラップの1曲目はフリーズでいいんじゃないかって。

――ちょっと野暮な質問ですけど、フリーズ、マイク・ジャック、ミリとそれぞれの魅力を白石さん(AZZURRO)なりに説明するとどうなりますかね。

AZZURRO それぞれ味がありますけど、共通していいと思っているのは声色です。結局ビートも全部そうなんですけど、“音”として好きなんですね。単純に生理的に気持ちいい。まあ、あとはある程度長い間知っているというのもあるけど。でも、まずは声色とタイミングかな。

――三者三様にそれぞれ男臭いとこがありますよね。


AZZURRO ああ、そうですね。ああいう味というか……まあ、生き様含めてというところもあります。技巧もそうだけど、それこそDJがEQをググッといじる姿がカッコイイ、みたいな。なんかそういうところに<B>を感じるので。それはラッパーにも共通してあるし、K-OGEEのスクラッチにしてもそうですね。

――白石さんてパッと「一番好きな海外のラッパーは?」と言われたら、なんて答えます?


AZZURRO 好きな海外のラッパー……ジェルーとか、ルーツ・マヌーヴァとか。

――非常によくわかります。

AZZURRO かな。

――ジェルーはともかく、ルーツ・マヌーヴァって言う人なかなかいないですよ。

AZZURRO そうかな?

――ルーツ・マヌーヴァは音も含めて白石さんっぽいかも、なんか。土臭さとメタリックさが共存してる感じが。

AZZURRO うん。だからまるっきり90年代の焼き直しみたいなことはやりたくなくて。音響的にも、つくり方という意味でも、要所要所にはそういう思いを忍ばせているつもりはある。原雅明さんに教えてもらったカルロス・ニーニョの『Future Roots』ってラジオ番組があるんですけど、そのタイトルの響きとか、凄くしっくりくる。“更新されるルーツ”って考え方には凄くシンパシーを覚えますね。大きく言うと、そういうものを提示したいというのは自分の中の大きなテーマとしてあります。

――ちょっと戻るんですけど、さっき選んだラッパーの基準は「声色とタイミング」って話でしたけど、そのタイミングというのをもうちょっと詳しく説明してくれますか? ラップの場合、フロウって言い方がありますけど、それを敢えて「タイミング」と言うのは?


AZZURRO だからやはり、音として捉えてるんでしょう。全部タイミングなんですよ、ビートって。それがどんな音色でどこに置かれてるか、そこにやっぱり人それぞれのグルーヴが出て、オン・タイミングでカチカチに打ち込んでいたら絶対に出てこないノリがある。それこそ1000分の1秒単位の話だと思うんですけど、でもそれがグルーヴにつながると思っていて。で、俺が音楽を通して表現したいのはそのグルーヴなんです。そこを詰めていくことで、長く聴くに耐えうるソウルが宿るんじゃないか、というか。

――機械だけではなかなか到達できないところ。


AZZURRO そうですね。基本的にはそれをビートの世界で1人追求しているんですが。ラップ曲の場合は、俺がひとりでつくっていたら到達しない世界に、そのラップが入ることで行けるという楽しみもある。

――自分ひとりでたどり着けないグルーヴに到達できるかもしれない、と。

AZZURRO うん。そうです。そこに歌詞の世界が入って、さらに膨らむ。まずは声色とタイミングですけど。あと、自分でラップはやらないので、アルバムの基本線としては、やはりインストになります。

――このラップの3曲って、インストとして聴いてもほかの曲と比べてグルーヴが違うんじゃないかと思ったんですよ。

AZZURRO ほう。

――ラップが乗った状態で僕は聴いてるんで、ラップに引きずられてそう聴こえちゃってるのか、それともやっぱりそもそもグルーヴが違うのか。ミリさんのトラック以外は、相当バンギンじゃないですか。首振り具合がこの2曲はあきらかに突出してるし、華がある。あきらかにトラック単体としても違うんじゃないかと思ったんですけど、どう思います?

AZZURRO 難しいなあ。つくってるときは意識していないです。ループができてから、「これはフリーズだろう」と思ってしまった、としか言いようがない。

――自分ひとりで曲をつくっていく過程で、その曲が持ってる、あるいは可能性として持ってるグルーヴが、それぞれラッパーだったりミュージシャンだったりが持っている声色、音色、タイミングを要請した、みたいな?

AZZURRO 多分、どこかでモードが変わるんですよ。まず大体ドラムから組み始めて、次にベースを乗せて、上ネタを乗せてという流れで進むのですが、途中まではこれがループとして成り立つにはなにが必要か?ということをずっと考えてやっている。で、それが形になったところで、さあこれを曲にしなきゃというとき、ここにあとなにが必要なんだろう?というモードに切り替わるんですね。それが楽器なのかラップなのかはその曲によるんですけど。

――曲が完成に至るまでに大きく分けて二段階あるってことですか?

AZZURRO そうです。だから、ファーストの時のインタビューで「ループに“死に化粧”を施す感覚で曲をつくる」という話をしていますけど、ループが出来た時点で、つまりドラムがあって、上ネタがあって、ベースがあって、それでもう一回俺の中で出来ているんです。2小節の繰り返しだけで超気持ちいいし、もうそれだけで俺的には延々聴いていられる。ただ、それをそのままリリースすることは無いわけですよ。それは……社会との接点? わかんないけど。社会性みたいな部分。

――音楽としての社会性。

AZZURRO そうそうそう。それを持たせるためにはやっぱりパッケージしなければいけない。だから死に化粧って言ったんですけど。

――だんだんそのあたりから白石さんの中の編集者視点が顔を出すっていう。

AZZURRO そうです。

――あの、このアルバムに入ってる曲って基本的にはループ・ミュージックで、展開が多いか少ないかでいうと少ないですよね。

AZZURRO はい。

――そのわりに、曲の長さは長いか短いかで言ったら短いんじゃないかと思うんですね。

AZZURRO はい。

――この音楽性なら別に6分7分あっても全然不思議じゃないと思うんですけど、意外と3分4分で終わる曲が多い。

AZZURRO はい。

――それは、展開を最小限にしたいのでこの長さしか保たないのか、それとも白石さんの中で「音楽としての社会性」を保つには3〜4分で収まるのが理想で、そうするとそんなに沢山展開をつくるわけにはいかないのか、どっちなんだろうと思ったんですよね。ニワトリが先か卵が先かじゃないけど、要は長さが先か展開が先か、という。

AZZURRO 自分の曲は、基本的には出来るだけミニマムにしたいんです。少ない音数の中で、例えばひとつひとつの音色の色気とか、2小節のループの中でキックを細かく動かしたりとか、スネアの大きさを全部一緒にしないとか、バスドラのタイミングが3発目だけちょっとだけうしろにあるとか、そういうことの積み重ねで繰り返し聴けるものになっていくと思っていて。音を足していろいろ展開させたりってことはあんまりやりたくないんです。ただその一方で、さっきの社会性の話じゃないけど、そういうものを延々流すのではなく、ある程度のポピュラリティ、おそらくはより多くの人が納得できるであろう落としどころを見つけたくて、それが3分程度の曲にする、ということになるのかな。

The B-Side E.P.――なんだかんだ言っても4、5分前後というのがひとつの目安ですよね、ポップ・ミュージックとしては。

AZZURRO うん。ただ今回のアルバムでも、例えばミリの曲とか、あとタナブ君のギターが入った曲(“Buonissimo”)みたいに、曲が要請すれば別に長くしますよ。あと、今回のアルバムから12インチ(「The B-Side E.P.」)を切るんですけど、クラブ・プレイのツールとしてエクステンデッド・バージョンとかは作ります。
 あとは、やっぱり俺はアルバムというフォーマットに愛着があるので、全体を通して聴き疲れないもの、頭からお尻まで聴いて感情の流れみたいなものを感じて欲しいという思いもあるんですよね。

←PREV 1 2 3 4 5 6 NEXT→