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VOL.4: Azzurro Interview (Interview and Text by Kou Furukawa)
――さらに言うと、ある種のビートが……インピーチ(The Honey Drippers“Impeach The President”)のハイハットが本当に好きなんだなって。
AZZURRO バレてますね〜。
――特に、スネアとオープン・ハイハットが好きなんだなって。
AZZURRO そうです。
――本当にクラシックビーツがお好きなんですね。
AZZURRO インピーチは、自分のテーマではないですけど、アルバムのどこかで必ず使うというのが縛りになっています。もちろん全部パターン変えてやっていますけど。
――MIX CDの方でも“Apache”とかとかたくさん出てきますよね。
AZZURRO そうですね。
――僕が気づいてないのも含めて、基本的にはクラシックビーツがほぼ全曲に使われている印象さえある。
AZZURRO まだまだ、全然ですよ。でも『The B-Side』に関してはDJプレミアではないですけど、あえて分かりやすく配していますけどね。
――そろそろ業(ごう)のレベルに近づいてきたと思うんですよ。クラシックビーツという業。
AZZURRO はい、そうですね。もうこの歳になってくると……業っていうのはまさにそうです。カルマです。たぶんこれを背負って死んでいくんだろうなというのは、何となく見えてきましたね。
――本当そんな感じしますよね。こだわりという言葉じゃそろそろ説明しきれないマジカルな領域に入ってきたと思いますね。
AZZURRO ははははははは。
――ちょっとぐらいそこは捨ててもいいんじゃないかってぐらいの。
AZZURRO 前に俺、札幌でDJが終わって、呼んでくれたナカタ君という若い子が「すげえよかったッス」みたいな感じでハグに来て、そのときに耳許で「終わってますね」って言われたんですよ。
――ははははは。
AZZURRO 「ああ、そうだよね」みたいな。それがなんか、我ながら凄く腑に落ちて。
――若い子にはわからない領域というのがあるんですけどね。終わってから始まることがあるという。これは三十半ば過ぎないと出てこないと思いますけどね。
AZZURRO はははは。
――「終わったな、俺」というところから始まるものってありますからね、確実に。
AZZURRO でも、それ嬉しかったんですよ。「あ、誉められてる、俺!」と思いましたから。
――完全に理解されていますね。
AZZURRO そうですね。
――白石さん、サンレコに入っていろんな音楽聴いて、プラス現場で刺激を受けて、自分で好きなものが相対化されてはっきりと自覚出来るようになったと。となると、逆に「自分が好きなものはこういうことなんですよ」というのを現場に還元したい気持ちもあるんじゃないですか?
AZZURRO そもそも今回は、ULTRA-VYBEの池田君が「アルバムやりましょう」って声を掛けてくれたことから始まっているんです。前作はDISK UNIONのSenna君だし、インナー・サイエンスも何かと声を掛けてくれたり……「White Stone」って自分の作品を出すためのレーベルなんですけど、俺が本当に出したいと思う人がいればそこから出していく、みたいなこともちょっとずつやれたらな、という気持ちはあります。
あとは、サンレコ入って変わったことと言えばもうひとつ、音響のメカニズムに関する理解度がファーストをつくったときと全然違うんですよ。ボブ・パワーやドクター・ドレがどんな機材を使ってなにをやっていたかっていうところから、そもそも音というのはどういう構成で成り立っていて、例えば200Hzあたりをいじると倍音に影響するとか……音響そのものに対する理解度が深くなって、そういうところも今回のアルバムには関係していると思います。マスタリングの仕事をする機会も増えて、そうすると他の人の音を預かる立場だから、いろいろと技を持っていなければならないし、知識も必要。そういう事も今回マスタリングお願いしたエンジニアの早乙女正雄さんからいろいろ学んだり研究したりしていく中で、耳の精度もちょっとずつは上がってきていると思うんですが。
――出したい音を出せるようになってきた、と。
AZZURRO そうですね。こういう機材を使ってこういうふうにしていけば自分が好きな質感を出せるという、その2009年の時点での形が「The B-Side」ということです。それが2007年のときは「10000〜」だったし。だから作品としてはまた変わっていくと思います。
――直線的に進化していく方向性、音の良さをひたすら追求していく方向性もあるじゃないですか。
AZZURRO はい。
――それとは別に、いま自分が現場で聴いて心地よい音というのがあって、今回は増えた引き出しの中から敢えてこういう音を選択したということですよね。
AZZURRO そうです。
――となると、今後現場からまた離れることがあるとしたら、次のアルバムではまた違う方向の音になる?
AZZURRO そうですね。あとは作品のテーマにもよります。インナー・サイエンスとの『attributions』のときは、インストで、ビートのスタイルもヒップホップに限らず、それこそデトロイト・テクノみたいな曲もつくっているし。シンセを使ってどこまで出来るか、みたいな自分なりの“縛り”をつくってやることは今後もあると思います。
ただ「いい音」って、それこそいま言ったように、ピュアオーディオ的な観点でいい音もあるし、でもピュアオーディオ的にいい音が、例えばOVOの現場でいい音かっていうと、それは違う。
――みんながみんなハイファイ指向になる必要もないし。
AZZURRO そう。例えばゆらゆら帝国の音を、俺は「いい音」だと思うんですよ。在り方として間違ってない。
――例えばゆら帝だったら、ゆら帝の音楽が必要としている音だと。
AZZURRO そうそう。坂本(慎太郎)さんはこういう音を出したかったんだろうな、という狙いが伝わってくるというか。そこになんにも不純物がない。
――音楽それぞれによって正しい音質というのがあると。
AZZURRO アーティストが出したい音がストレートに出ているとリスナーに伝われば、それはいい音だと思います。
――音質というのは、単純に善し悪しで測るものじゃなくて、その善し悪しも含めて手段だということですよね。
AZZURRO そう思いますけどね。それが作品だったり、アルバムごとに変わっても、在り方として間違っていなければいい。だから今回のアルバムにしても、セカンドの反省からこうなったわけではないんですよ。あれはあれであのときの俺の作品の在り方としては間違っていなかった。ただ、あれはクラブではかけにくくて、そして俺のクラブの現場が増えたから、そういうふうに変わったということなんですね。
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