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VOL.4: Azzurro Interview (Interview and Text by Kou Furukawa)

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――あの、ここでちょっと単発的な質問になるんですけど。

AZZURRO はい。

――素朴な質問ですけど、白石さんて鐘の音とか鈴の音が好きですよね? ていうか、凄くいっぱい入ってますよね、今回のアルバム。


AZZURRO ああ、そうかも。

――やたらチャリチャリ鳴ってるんですけど。

AZZURRO はい、細かい鈴。それもね、あとで気づいたんですよ。

――じゃあ、気がついたらいっぱい入ってた?


AZZURRO 金物がわりと多いですよね、今回。

――あきらかに多いですね。

AZZURRO 多いですよね。なんでしょうね?

――このアルバムのムードを決定づけてる結構重要なところだと思うんですけど。

AZZURRO キューバとかアフリカの音楽とか、最近そういうのを聴いているのもあるかもしれない。それもarmoniaを通して教えてもらってたんですけど。2拍/4拍のスネアの間に変わった金物、違う刻みのリズムが入るのが、いまは聴いていて気持ちいい。

――ポリリズム的な。


AZZURRO そうですね。

――鐘の音とか鈴の音って要するに金属音じゃないですか。


AZZURRO うん。

――金属音って昔から儀式的な場面で使われたり、覚醒作用がある音だって言われたりもしますけど、今回のアルバムだとトラックのコード感をぶち壊す不協和音的な役割を担っていると思って。


AZZURRO はい。

――それが何とも言えず不穏で、緊張感を生んでると思ったんですよね。

AZZURRO あと、スネアやキックは土っぽい音が多いじゃないですか。

――はい。

AZZURRO コントラストというか、それと対になるように金物を配したのかもしれない。あえて分析的に言うと。

――僕もそういう印象を持ちました。ルーツ・マヌーヴァも、トラックだけ取ると未来的なルックスなのに、彼自身の声はどこか土臭さがあって。ある種メタリックな不思議な音楽になってますよね。それに近いと思った。ドラム自体はサンプリングだったり、生楽器も含めてヒューマンなタッチもありますけど、金属音が通奏低音のように鳴ってるんで、どこかメタリックというか、近未来的というか。

AZZURRO そうかな。

――大雑把に言うと、白石さんのSF趣味を感じるんですよね。


AZZURRO うん。あとは、たぶん俺なりの、90年代と同じことをしていてもしょうがないというところに通じているのかな。

――だからさっき「Future Roots」って言葉が出たとき、来た!って感じだったんですけど。

AZZURRO なにかしらスパイスじゃないけど、2009年に出すものとして、焼き直しではないよということは示したかったです。だからシンセの音も実は結構入ってるし。今後も、ヒップホップをサンプリングだけでつくることはないと思います。逆に、例えばミニマル・テクノをサンプルだけで作るとか、そういうことはやるかもしれないけど。新しいプラグインとか、新しいソフトシンセとか、それを俺らしく使えると思ったら使うと思うし。

――逆に言うとそれだけ新しいルックスの音楽だとも言えるから、聴き手が簡単に安心できない部分もある。

AZZURRO ああ、はい。

――そことちょっと関連して思ったのが、音楽の聴き方として、「明るい曲」「悲しい曲」とか、単純化した感情に振り分けて聴く聴き方があるじゃないですか。「悲しいときに聴く音楽」「嬉しいときに聴く音楽」とか。でもこのアルバムは、曲単位で見てもアルバム単位で見ても、どういう感情でどういう景色を描いたか、全然ひと言じゃ言えないなと思って。

AZZURRO はい。

――例えば「サウダージ(Saudade)」って言葉が指し示す感情は日本語に置き換えられない、みたいな話があるじゃないですか。それと同じように、このアルバムが描いてる景色、感情をはっきりと示す言葉が見あたらない。

AZZURRO はい。

ULTIMATE FORCE I'M NOT PLAYING――それは白石さんの中にはあるのかなって。

AZZURRO ええと、セカンドのときはジェイムズ・ティプトリー・Jr.とか、モチーフになるわかりやすい物語なりイメージなりがあったんですけど、物語に触発されて音が浮かんだりとか、そういうのは今回はないですね。例外的に「Berlin 2001」は昨年の秋にベルリンに行ったときの感じが割と色濃く反映されていますけど。

――音楽にとって視覚とは? みたいなことを最近よく考えていて。音楽と視覚って近いところにあるじゃないですか。簡単な例でいうと、例えばCDやレコードにはジャケットがありますよね。これは一番わかりやすい音楽の視覚イメージとも言える。

AZZURRO うん。

――それから聴き手が能動的に行なう行為として、歌詞で歌ってる状況や感情を思い浮かべる。インストゥルメンタルでも、ある音を聴いてある情景を思い浮かべたり。一方送り手側も、最近は特にパソコンで音をつくると、あれは非常に音楽の全体像を視覚的に把握しやすいじゃないですか。

AZZURRO はいはい。

――そういう意味でのつくり手側の音楽の視覚化みたいなのも進んでる。


AZZURRO うん。

――白石さんの中で、自分の音楽の視覚化みたいなことって、どういうふうに捉えてるんだろうなって。ミュージシャンなら肉体に染みついた演奏技術で、ある種惰性というか、音楽を音楽のまま、抽象的なもののままに演奏してつくることは出来ると思うんですけど、DTMの人は映像的なイメージから逃れて音楽を作るのってなかなか難しいんじゃないかと思ったんですよ。

AZZURRO なるほどね。でも、坂本龍一さんが新作(「out of noise」/2009年3月リリース)を出して、そのアルバムについて「生け花みたいなもの」って言っていて。それは、こんなこと言うのもおこがましいんだけど、なんかわかる気がした。

――具体的に言うと?

AZZURRO 生け花って、たぶんこうやって刺していってちょっと動かして、また眺めて、1本抜いて、みたいな……で、「これで(完成)」という感じだと思うんですけど、それと近いんですよ。その曲自体の立ち姿というか、それをいじっていく中で曲としてのフォルムが固まっていく感じ。今回は物語性というよりも、単純に曲としての立ち姿がどうなるかということを考えながら作っていたような気がします。

――ただ、さっき言ったことと矛盾するようですけど、明確な景色がイメージできない音楽だと思う反面、とても映像的だと思ったんですね。例えばこのアルバムをサウンドトラックにした映画があるんだったら観てみたい。

AZZURRO あ、それは、マスタリングしてるときに早乙女さんにも言われたんですよ、「サントラみたいだね」って。俺は全然ピンと来なかったんですけど。

――3枚通じて、今回が一番そう思ったんですけどね。

AZZURRO そうなんだ。

――イギリスあたりの暗めの近未来SF、みたいなイメージなんですけどね。そういう映画でこのアルバムが流れてたら凄くいい映画なんじゃないかっていう気がする。

AZZURRO 前のアルバムとかファーストのほうが俺の中では画みたいなものが、その曲ごとにありましたけどね。今回はそれがなくて。なんか不思議ですね。

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