azzurro official website
HOME BIOGRAPHY DISCOGRAPHY AUDIO & VIDEO INTERVIEW PHOTOS LINKS CONTACT TO AZZURRO
 
VOL.1: Azzurro Interview Part.1 [ 1-1 1-2 1-3 TOP ]-Interview by Kou Furukawa-

──ヒップホップかどうかは好き嫌いでしか計れない、という話ですけど、では送り手として、そういうジャッジを行なうときはありますか? 細かい話ですけど、たとえばスネアをこうしたら自分の中ではヒップホップではなくなる、とか、このネタをこうチョップしたらヒップホップっぽさが失われてしまう、という線引きがあるのか。
AZZURRO いや、それはないかな。このアルバムも「サンプリングにこだわってますね」ってよく言われるけど、6:4で4が音源だったりするし。そういうところでの、こうしちゃダメ、みたいなのはべつにないし、人にどうこう言うものでもない。俺はよく言うんだけど、「ヒップホップとしてカッコよければ」なんでもいいんじゃないかな。「ヒップホップはなんでもアリ」じゃなくてね。

──確かに、とてもヒップホップ的な音楽性だとは思うんですよね、このアルバムは。その理由のひとつは、まずビートに対する審美眼というか、ビートの太さに対して感じるんですけど。このビートが、ヒップホップと言われて凄くしっくりくる感じがある。
AZZURRO はいはい。あの、ターンテーブリストの作品を聴いててよく思うんだけど、スクラッチは格好いいけどビートが単調だったりとか、エレクトロニカっぽいものやUKのジャズっぽいインストを聴いて、上ネタはいいけどビートが弱ぇな、ということはよく思うから。だからRob Swiftなんかは凄くしっくりくる。Large Professorのビートで擦ったりして、いやーわかるよ!というか。Peanuts Butter wolfのアルバムとかね。

──白石さんってビートに対してフェティッシュなところはあったりするんですか?
AZZURRO いや、ない。ネタとか全然詳しくないし、これはあとで桂と話そうと思ってたんだけど、洋服みたいなもんだと思うんだよね。スネアとかキックってジーパンみたいなもんでさ。

──?
AZZURRO たとえばね、裸にわけわかんない布とかまとってたら、それはキチガイってことじゃないですか。で、ムロ氏とかは多分ビンテージのジーンズとかを凄い掘ってるタイプの人なんですよ。で、俺はそこまでこだわらないけど、合わせ方とか着こなし方とか、そういうところで格好良く見えればいいなって考え方をしてるかな。パーツ自体というより、その組み合わせとかにこだわりがある、という。同じ服着ても格好いい人と格好よくない人っているわけじゃん?

──つまり、音色自体にそんなに凝ったものは使わない、ということ?
AZZURRO うん、使ってないと思うな。トライトンを合わせたりするぐらいで、ただその合わせ方は試行錯誤して組み上げるから、そういう意味ではフェティッシュだと思うけど。ただムロ氏みたいな方向のフェティッシュではないよね。ビートそのものを掘り起こして、それこそ一点もののジーンズをどうだ!って見せるよりも、ジーンズは普通だけどこんな靴を合わせて、という考え方をしてるつくり手だと自分では思ってる。

──具体的に言うと、それはドラム・パターンだったり、ドラム音色の加工だったり、音響処理だったり、ということですね?
AZZURRO そう。だからスネア、キック、ハットにしたって、3つ4つは組み合わせてるから。ひとつの音ですべてをまかなうようなつくり方はしない。オリジナリティがあると言えるとしたら、そこかな。レイヤーの組み方だったり、この場所にこの音がある、みたいなことは考えてる方だと思う。

──パターン自体はどうですか?
AZZURRO うーんとね……「ループは退屈だ」って物言いがあるけど、俺はその退屈なところも含めて愛してるって感じなんだよね。

──? それは自分の作品に対してじゃなくて、一般論で言われてること? 「ループは退屈だ」って。
AZZURRO そうそう。ループは退屈だから、イコール、ヒップホップは退屈って人がいるんだけど、でもやっぱり、そのループをうまく回すためにどれだけ細かい作業を施すか、というところにこだわりたいんだよね。ドラムの打ち方自体で流れをつくる、たとえばいまのO.N.O氏(ザ・ブルー・ハーブ)とかDJクロック氏みたいなやり方はひとつの方向性としてあると思うし、いまハシムとやってるのは比較的そういう感じだったりするんだけど、でもずっと聴いてられるループをつくることがどれだけ大変か。結局、整理する方向というか、スムースにしていく方向に労力が割かれるから、その労力が見えにくいんだよね。

──完成形になればなるほど、かかった手間が見えにくくなるんでしょうね。
AZZURRO そう。どんどん研磨していく作業だし、装飾を施していくのとは反対方向のベクトルの作業だからね。だから簡単につくれると思っちゃうんだろうけど。実際、そういうのもあるとは思うし。

──まぁ、簡単につくっても完成度が高いものをつくっちゃう人もいたでしょうけどね。初期D.I.T.C.とか絶対そうでしょ。
AZZURRO まあね。これもこないだインナーサイエンスと話したことだけど、天然には憧れるんだけど、俺らはそうじゃない。それを自覚したときに、じゃあどう誠実につくるか、っていう話なんだよね。天然には憧れるけどさ。マーリー・マールとかね。あと、コーヘイとか。

──彼はニガーですね。
AZZURRO あとは誰かなぁ……タイプライターとかニガーだねぇ。あとイル・スラング・ブローカーとかはDa Beatminerz、ていうかSmif-N-Wessunの1枚目を聴いたときみたいな、憧れにも似た感情があるというか。うわ、これはできないわ俺、という。あの感じはどう逆立ちしても……いや、べつにもう、無理してそうすることもないから、俺なりに誠実にやろうって感じかな。

──でも、その生真面目さはアルバムから伝わってきますけどね。節制が効いた作品だとも思うし。
AZZURRO そうだねぇ。打ちすぎると壊れるんだよね、グルーヴが。ループでせっかくつくったグルーヴが、ドラムを打ちすぎたりフリップしすぎたりすることで台無しになっちゃう。そのおもしろさもないわけじゃないけど、飽きるのも早いんだよね、そういうものは。その場で刹那的に消費される作品のおもしろさもあるとは思うけど、それは俺がやることじゃない。それよりも、多少退屈な瞬間があっても、5年10年経って聴き返してみて、やっぱり俺はこれが好きだなって言えるものをつくりたい。それが理想のひとつとしてあるかな。

──自分の音楽が、短いスパンで聴くと退屈に聴こえるかもしれない、という自覚があるということは、音楽をスピーディーに消費するタイプのリスナーを疎外してしまう可能性がある、そしてそれは最初から折り込み済み、ということですか?
AZZURRO うん。大量消費されるために、みんなに好かれるために何かをやるっていう発想はないな。ただ、売れない音楽がいいとも思ってないから、こうやって自分でウェブも立ち上げて聴けるようにしたりして、できるだけ間口を広げる努力はしてるつもり。とりあえず聴いてみてほしい、できるだけ多くの人に聴いてほしい、そのうえで好きじゃなかったらそれでいい、という感じかな。

VOL.1: Azzurro Interview Part.2に続く

VOL.1: Azzurro Interview Part.1 [ 1-1 1-2 1-3 TOP ]