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VOL.1: Azzurro Interview Part.2 [ 2-1 2-2 2-3 TOP ]-Interview by Kou Furukawa-
──白石さんって自分の作品を繰り返し聴くタイプですか?
AZZURRO 聴くほうだとは思う。聴くほうだと思うけど、でもね、(素材としての)ループをやっぱり一番聴く。ループって、そこからどうにでもなるような可能性があって、そこから「こういうのがいいんじゃないか」と思ってその理想に近づけていくんだけど、曲になった時点でループとしては“死ぬ”わけですよ。ループとしてはそこで死ぬから、その死んだものを聴き返して懐かしんだりする、という感覚。
──生前の姿ってこと?
AZZURRO そうそう。ループはミニマルなものだけど、それだけにどうにでも行くんですよ。スクラッチ乗せてもいいしラップ乗せてもいい、ここから展開つくろうかどうしようか、とか。そこを考えてるのは凄い楽しいんだけど、曲になった時点では死ぬ。それに対して夢中になることはない。
──じゃあ、自分のアルバムを聴き直して、最高!ってことはない?
AZZURRO それはない。最高!ってのはループが出来た時の方が多いね。
──(桂)「セックスのときはかけるね」とかは?
AZZURRO いやでも、どっちかっつうと、音つくってるのはオナニーだね。クラブDJはセックスだと思うけど。
──以前白石さん、『blast』でインタビュー受けてたとき、アルバムでトータルとして意識したことは? って質問に「音楽としてのスケール感を失わないこと」と答えてるんですけど、これについて詳しく教えて下さい。
AZZURRO ゲストを呼んでやったようなレコーディングのとき、最終的にはすべて俺がエディットするっていう前提でみんなにワイワイやってもらったんだけど、凄くいいセッションが多かったのね。瘋癲とかさ。で、その場の雰囲気みたいなものをなるべく残したかった……細かい部分は絶対いじらなきゃいけないんだけど、でもいじり過ぎるとどんどんスケールが小っちゃいものになっていく感じがするんだよね。ヒラカツ君のジャグリングも、音決めしたら、一発で決めちゃったし。モタッてるんだけど、終わった瞬間にこれでいいなって思ったから、それはそのままにしてある。あんましそこをやり過ぎると冷めちゃうというか、飽きちゃうんだよね。そういうところは意識したかな。あんまりトリートメントの方向に行くとよくないと思う。
──明快だと思ったんですよ。手をかける部分と、そのままにしておく部分が。音響処理はヒップホップ作品としては相当手がかかってると思うけど、でもチョップとかフリップでグチャグチャにしていく方向性ではないですよね。それって凄くヒップホップ的な価値観だなって思ったんです。
AZZURRO ああ、そういう「見切り感」みたいなところはあるかもね。実際つくってるときもそういうところは注意してたし。そのバランス……バランスというよりは、行くところと行かないところの判断なんだけどね。追い込むところと踏みとどまるところ、というか。
──(桂)あのさぁ、このアルバムに締めきりってあったの?
AZZURRO ないよ。なんにもないよ。だからもう、俺がどうするかってところだけ。
──(桂)これはもうこれでいいやっていう、ピリオドを打つ瞬間って締切に左右されるじゃないですか。で、締切がないものってそのままズルズルつくってたりして……作業的には締切があったほうが楽だったりするじゃないですか。
AZZURRO それはそうでしょう。
──(桂)ピリオドを打つのは自分で決めるわけじゃないですか。いま振り返って見て不満な点とかはあります?
AZZURRO いや、ループの死に場としてこれ以上のものはない、かな。
──(桂)じゃあ、オナニーとしては完璧なオナニー?
AZZURRO そうだねぇ。「キッモチイイ……」っていう。
──これは昔、坂本龍一が話してたことだけど、テクノロジーを使った音楽は何千分の一秒単位で作業ができるから、その気になればいくらでも作業を続けることができるって。それがYMO時代は他のメンバーがいたりプロダクツとしての締切が定まってたから“止めどき”がわかったけど、いざ自由な環境でソロをつくっていいって言われたとき、その止めどきの根拠がなくて困った、というような話をしてて。それが凄く印象に残ってるんですよね。
AZZURRO 俺の場合はだから、「ループが死んだとき」ということかな。実際、殺すっていう感覚で臨むから。あと、アルバムに関しては俺の中での締切はあったからね。瘋癲の露出とかも考えて、去年の8月には制作は終わっていたから。本当なら2002年10月には出したかったんだよね。
──(桂)同じ質問をこのジャケを描いた(桐田)茂にもしたんですよ。こういう油彩ってそれこそずっと塗ってられるじゃないですか。だから茂に聞いたんだけど、そしたら、「わかんないっす」って言ってた。
──ある意味、誠実な答えですね。
AZZURRO そうだね。
──坂本龍一も同じこと言ってましたよ。止めどきの根拠を神秘主義に求めたりする人がいるよねって、それは暗に細野晴臣のことを言ってるんですけど、でも根拠がないならそこで開き直ってやり続けるしかない、そのほうが誠実だって。でね、白石さんはずっと、人との繋がりも含めて自分のヒップホップ観だ、という話をしてたけど、そこがヒップホップはおもしろいとこだと思うんでよすね。DJ的な視点っていうのがまさにそうだけど、要は他者とコミュニケートする作業じゃないですか。だから、内面探求的というか、エゴイスティックな表現にかたより過ぎると、それはヒップホップ的にはノーだっていうセーブ機能が働くんじゃないかって。
AZZURRO つくってるときには自覚してなかったけど、いま言われるとそういうところもあった気はしてくるかな。それはたぶん、これまでのレコーディングの経験だったり、俺がずっとヒップホップを聴いてきて染みついてるものがあるんだと思うけど。
──これまでインタビューしてきた限りだと、ずっと作業を続けてく中でパシッとピリオドが決まるタイプと、微調整を続けてだんだん針の振れ幅が小さくなって、「こんなところかな」って確信を強めていくタイプと、ふた通りあるみたいね。
AZZURRO 俺もそっちかな。「死に化粧が厚すぎた」って削ったりとかもあるよ。付け足すより削るほうが多い……いや、付けようとして付けない、っていうのが一番多いかな。
──(桂)それが気持ちいいんだよね、っていう。
──それこそ一生続けられそうな作業ですけどね。
AZZURRO そうだね。そうかもね。でもまぁ、どこかで確信があるから、これでいいって止まるんだけどね。やっぱり、世の中に出すという事を前提に作ってるから。
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