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VOL.1: Azzurro Interview Part.3 [ 3-1 3-2 TOP ] -Interview by Atsushi Katsura-

──悪い意味で捉えて欲しくないんだけど、これは今の日本で100万枚売れる音楽ではないじゃないですか。
AZZURRO そりゃそうだ。

──もちろんいい音楽だと思ってるし、みんな褒めているけど、これが100万枚売れる世の中は来ないと思うんですよ。以前、有名なDJのお方が「もっとシーンをでかくしていかなきゃダメだ。もっとシーンはデカくなる」みたいなことを言っていて……でも、俺はそれを疑問視しているところがあって。要はヒップホップを好きになる人のキャパシティの話なんだけど。あ、彼等が売ろうとしている比較的コアなヒップホップのキャパシティのね。で、白石さんはある程度限られた層に向けてアルバムを作っているわけじゃない?
AZZURRO うーん……。

──例えば、女子中学生には売ろうと思っていないよね?
AZZURRO いや、自ら求めて聴いてくれるんだったら、全然買って欲しいけどね。別に間口を狭めたり、ハードルを上げるつもりはない……いや、システムには乗ってないから。そういう意味でのハードルはあるかもしれないけど。ある種、買わされているところもあるじゃん? J・ポップって。で、そのシステムには乗っていないけど、自ら求めて聴いてくれる人には出来るだけハードルを低くしたいというのと、そのために何かをやっている気持ちというのは俺の中であるんだけど。日本で売れる上限があるんだったら、海外に持って行けばいいし。

──それは分かりますよ。で、何が言いたいのかというとね、評価されたいという気持ちと、評価する側に対してどこまで確信的に作ってたか?ってことなんですよ。
AZZURRO んーと、評価してもらう前に今回作って思うのは、それは編集者時代の俺を反省することでもあるんだけど、まず聴いてもらうことが大変なんだっていうこと。だから、まず聴いてくれ!って感じかな。ちゃんと聴いてよっていう。そういうのがいかにないがしろにされているかってことをすごく思うかな。評価してくれっていうより、1回通してちゃんと聴いてくれっていう気持ちの方が強いかな。だから、作ったものに対しての反応の軽薄さたるやっていうかさ。自戒の意味も含めてなんだけど、評価してくれっていう前にまず聴いてくれっていう。そういうことを作ってみて改めてすごく思った。けなすにもちゃんと聴いてけなせ、っていう。真摯な反応であれば、別に誉められなくても嬉しいし。

──何を誘導したかったっていうと……究極の選択ってあるじゃん? 『カレー味のウンコとウンコ味のカレー、どちらなら食べられる?』みたいな。それにみんな色々と迷うわけだけど、でもこの問いには前提がいくつかあるわけですよ。最初の前提は、まず殆どの人がカレーとウンコは似ていると思っていることなんですよ。で、それはある種購買者のレヴェルなんだよね。でも、音を作る側の人っていうのは、最初にカレーを作った人なんだよね。カレーを作った人もウンコは知っているわけだから、「ヤベッ、ウンコに似てきちゃった」と思ったはずなんだよね。だんだん似てきたっていうね。多分そこで一度立ち止まったと思うんだよ、「このまま作り続けると、これはウンコと思われやしないか?」と。「これを食べてくれよと言えるのか?」と。で、ウンコから遠ざかるために同じ味のまま全く違う形状にしてみようと試みた。が、もう一度立ち止まる。「いや、これでいいんだ」と。美味いんだから、「まあ食ってみてくれ」って。それで、「うまい!」「でしょ?」で決着。それが発信側だと思うんだよね。発信側って言葉はあまり使いたくないんだけどね。でもまあ、責任は生じるじゃない。
AZZURRO そうだね。

──産業廃棄物になるかどうかの境目っていうかさ。で、その確信の部分、要はウンコに見えるかもしれないけど、人によってはこう聴こえるかもしれないけど、「でも!」という確信の部分。
AZZURRO 俺は「これは美味い!」と思って出してますよ。でも、それが口に合わないって奴に対しての心配りはないよね。

──それはいらないでしょ。
AZZURRO まぁ、そうだね。じゃあ、みんなはどんな味が好みなんだろう?ってリサーチして味を変えていくカレー屋もあると思うんだけど、そうやろうとは思っていない。

──(古川)カレーとウンコの喩えで言うと、カレーはカレーの味として、ポップなものを目指すなら外見的に脱ウンコの方向を目指さなきゃいけない。けど、白石さんはウンコってこういうものだからウンコのままで出している感じ?
AZZURRO 見た目を全く気にしないという事はないよ。やっぱり世に出すものだからさ。ただね、旨いものをわざわざ合成着色料とか入れてまで良く見せようとは思わないね。だってうめぇじゃんっていうね。ウンコっぽいけど、こっちの方がうめぇじゃん。

──そこでもう一つ聞きたいんだけど、これは桐田がよく言うんだけど、サービス精神。自分の創作の範囲内ではあるんだけども、どこかで聴いた人や絵を見る人のことを考える部分。俺様だ!っていうんじゃなくて、例えば白石さんだったら、聴きやすくしていたり、門戸を広げていたり、要するに考えようによっては余計なデコレーション。それはしてる?
AZZURRO 結構わかりやすいと思うんだけどね。「Il Mare Azzurro」は難解なアルバムだとは思っていないんだけど、どうなんだろう? 自分は結構ベタだと思っているんだよね。それは別にサービスしようと思っているわけじゃなくて、ベタな自分を出しているって感じ。それは逆に聞いてみたい。ポップスのフォーマットから外れたくてこういうインストを作りました、という人もいるんだけど、俺は結構、それぞれ曲としてのキャラが立っていると思っているのね、今回に関しては。曲を通して伝えたいイメージっていうのは、俺の中では超ベタなんだよ。“Lunatic(A Walk On The Moon)”とかさ、あのネタでアポロネタ入って、ピアニカ入って、俺の中では超ベタ。そのまま出しているっていう。だから質問に答えると、分かりやすくしようと思ってはやっていないけど、分かりやすいものはそれはそれで好きだから、それはそのまま出ていると思う。という感じだろうか。

VOL.1: Azzurro Interview Part.4に続く

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