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VOL.2: Azzurro + Inner Science Interview (Interview by Hiroyuki Ichinoki)

身体を縮こめる寒さの残る某月某日。スプリット・ミックステープ「Sequential Landform」を完成させたINNER SCIENCEとAZZURROは渋谷にいた。そこへ軽く挨拶を交わして合流する筆者。
「どこ行きましょうかねえ」――白い息を吐きながら歩く3人。ほどなくAZZURROが案内するままに、とある飲み屋へ。テーブルについたところでお決まりの「生ビール」を注文して、話は始まる。


■この組み合わせを意外に思う人もいるかもね。
AZZURRO:最初からお互いに、聴いた作品の感想をちゃんと言う奴だっていう印象があったんだよね。
INNER SCIENCE:なるべくしてこうなったのかな感はすごいありますけど。

■そもそもスプリット・ミックステープのアイディアはどういうところから始まったの?
AZZURRO:なんだろね? たぶん呑んでてなんだよね。
INNER SCIENCE:形はともかく、なんか一緒にやりたいって話をしてて。

■その辺はあやふやなんだ。
INNER SCIENCE:まあ酒の席で言ったことを現実にする男だってことを見せつけたかったっていう(笑)。酒の席での話をやってくれる人もそんなにいないし。

■今回のミックステープに関して、それぞれの具体的な選曲基準はどうだったの?
AZZURRO:俺はふだんかけてる曲とかなり近い感じ。
INNER SCIENCE:俺は半々。ヒップホップ、好きだよって感じは多分今までのテープであんまり出してない部分で、せっかく白石さんとやるんだし、出そうかなって。自分一人でやらなかった意味はそこにある程度集約されていくのかな。ビートは同列上にあるもんだしかっこいいもん、みたいな。そういう感覚が形になってよかった。
AZZURRO:あと、ONEOWNERで出すってのはすごい意識した。あんまりどアッパーになっても怒られるかな、みたいな。
INNER SCIENCE:ITAOくんもそうゆうような事言ってくれたんだけど、ONEOWNERっぽさって本人がいちばんわかってないんですよ。
AZZURRO:ミドル(・スクール)とかはやめよう、みたいなのがあったな。
INNER SCIENCE:でも俺が今クラブ・プレイする時かけるのはMo' Waxの中期の方だったりするから、(ネタ的に)ミドルにかぶりますよ。
AZZURRO:でも、アルティメット・フォースとかじゃないじゃん。スティーゾとかさ(笑)。
INNER SCIENCE:ふふ。たしかに。まぁクラブ・プレイじゃなくてテープですしね。
AZZURRO:ありかなとは思ったんだけどね、EPMDとかは。あと、日本語モノに行こうかなっていうのはなんとなくあった。
INNER SCIENCE:それが白石さんっぽい。俺は入れないじゃないですか、クラブではかけたりするけど。でも聴いてきてるものが大きいところで似てる部分もあって。っていうか、ヒップホップがまだ一つの柱だった頃に聴いてたらみんな同じものを聴いてるわけで、そういう部分が出てればいいのかなとか思った。 だから“Impeach(The President)”使いも出てきたわけで。

■選曲こそ違え、そういう意味の価値観の共有はやっぱり聴いてても感じる。音の質感とかね。二人とも“Impeach”を使ってるけど、それはあらかじめ想定したことなの?
AZZURRO:いや、それは偶然。今回のテープのテーマとして、“サンプリング感”っていうのを漠然と二人で話してて、俺はその話をした2日ぐらい後に『Ultimate Breaks & Beats』の組み替えで4パターンくらい作っちゃってたから、こういう感じかなあ、みたいにやってたんだけど。で、ある日メールで「“Impeach”とかも使ってます」って書いてあって、「あー、俺もイントロで使ったけど」みたいな。
INNER SCIENCE:お互いその辺は探ったり、匂わせたりで。俺は白石さんのものを聴いてる人たちをどれだけなぎ倒せるのかと思って、そこにだけすべての力を注いだっていう。
AZZURRO:まあ、そうだよね。結構バトル・モードで。

■INNER SCIENCE的には下克上だ、と(笑)。
AZZURRO:はは。そうなるのか。
INNER SCIENCE:下克上ってわけじゃないけど。
AZZURRO:いいじゃん、そういうふうに取ってもらおうよ。

■それはともかく、お互いのミックスを聴いた印象はどうだった?

AZZURRO:「あー……バカだなあ……」っていう(笑)。
INNER SCIENCE:(笑)それは共通してる。白石さんの方に入ってるロード・フィネスとかは、俺の候補にも挙がってたんですよ。二人してそんなんだから。
AZZURRO:キース・マリィとか普通の感性じゃねえなっていう。デトロイト・エメラルズからあそこってところが。
INNER SCIENCE:2004年にしてそれですからね。
AZZURRO:偶然ROOMで聴いて、改めてかっこいいなあってバンジーと言ってたばかりだったから、うわー、来たかっていう。
INNER SCIENCE:でも、こういう話ができて、現在進行形でいろんな音楽を聴いた上でこういうことをやってる人は正直そんなにいなくて、特にミックスものを作れる人では。俺としては初めてそういう人と遭遇してるかも。

■ホントに通ずる部分がいろいろあったわけだ。
INNER SCIENCE:やっぱり通ずる部分はものすごくあった。サンプリングのドラムが好きだし、ビートの攻め方とかもそうだし。でも白石さん(AZZURRO)はバランスのよさがすごいと思った。そこ行っちゃうのかよっていう。
AZZURRO:逆に俺は、ゆるやかに、でも確実に盛り上がってく構成って全然できないから、それはすげえと思ったな。インスト作るにしても、この人は絶対言葉使わないけど、俺けっこう声ネタを使う。そういう意味でも話法は全然違うんだけど、ビートの感じとかは「あー、ここ好きなんでしょ?」っていう。クラブ・プレイ聴いたりしてもそうだし。

■いずれにしろ、二人が顔見合わせてニヤニヤしてる絵が浮かぶミックステープだよね。そういうのは伝わるんじゃないかなあ。
AZZURRO:とにかく、何作るのでも楽しくやってるってのが打ち出せればいいと思ってて。そういうのは今回のテープでも出せてると思う。
INNER SCIENCE:それは出しすぎなくらいでしょ〜。

■二人にとってこのミックステープが次の自作の布石になるっていう意味あいはあるのかなあ?
AZZURRO:そういうことは全くないです(笑)。
INNER SCIENCE:そんな要素はゼロですね。

■ぎゃふん!


……酒が進むうち、3人の話はミックステープから気の向くまま様々な方向に千鳥足。音楽にぶらり、業界にぶらり、彼女にぶらり。電車の時間を気にして店を出た身体に吹く風は寒かったけど、心はちょっとだけ温かった。